新創刊雑誌に「悪魔狩り」の外伝が載るというので、ほくほくしながら本屋に行った。しかし、実際に呼んで見ると少し期待外れな物だった。面白いし、特に悪い部分もないのだが、如何せん短すぎる。短期集中連載の第1回とかだったらこれくらいでもいいが、読み切りでこれだとかなり食い足りない。
あと、「ウリエル外伝」といいながら、ウリエルの出番があまり無かったのは、広告に偽りありだ。尺の大半はルッカ(青年バージョン)とクロノス(14代目悪魔狩り)の会話に費やされていたような気がする。最後のページ(=最後の1コマ)まで顔を映さないのは、らしくていいのだが、何時もはそこに持って行く為にもう少し色々とやるからな。「ため」はあっても「仕込み」がないので、ラストは少し空振っていた。
まあ、この読み切りを読む人間のほとんどは生っ粋の信者で、『イノセントブレード・アンヴェイル』巻末の補足情報呼んでいるだろうから、普通にウリエルとラファエル・ガルシアの馴れ初めをやってもあまり意味がないんだけどね。あれ読んでいるとタイトルを見ただけで、「多分こういう話」と予想できてしまうからな。普通に話進められても、あまり新味がない。固定客も知らない新情報を与える為に正道を外したのは、それはそれで正しい。
実際、ミカエルとアニエルの関係はいいサプライズだった。後付け設定だろうけど、不自然だった部分がむしろ上手くフォローされている。アニエルも「鍵」になれるくらいの「霊格」の持ち主。マギーに対抗する役者としては、不足なしだ。
もっとも、アニエル当人が早々に死んでしまっているので、結局は過去の話、あるいは「ありえた可能性の一つ」でしかないのが困り物。当の二人が顔を合わせた事もほとんどないようだし、ドラマとしてどうこうなる物でもない。ルッカではないが、せめてマギーが生きている内に言え、そういう事は。
結局、今回の収穫は、どっちかというと話よりもキャラのデザインとかの方にあった。特に、ラファエル・ガルシアの顔とキャラクターはいい意味で予想外。ああいう若人だとは思わなかったよ。名前が名前なんで、もっとアホっぽい奴だと思っていたのだが、蓋を開けて見るとさわやかで知的で大人しい好青年だった。これは意表を突かれた。
同様にクロノスも、思っていたほどサルトルに似てなかったので良かった。ロドム(25代目)がかなりサルトルに似ていたので、どうせ代々同じ顔なのだろうと高をくくっていたのだが、そうでもなかったようだ。血の繋がりを感じさせつつも、適度に別人だった。
一方で、青年ルッカのデザインは普通でつまらなかった。「悪魔狩り」本編のころから将来はどうなるんだろうかと色々と期待していたのだが、特に変わった事もなく普通に成長していた。どうやら期待しすぎてしまったようだ。まあ、既に『イノセントブレード・アンヴェイル』で老人の状態が描かれているから、もはや意外性が入る余地はないんだけど。実際、「「悪魔狩り」のガキの成長した姿」というより、「『イノセントブレード・アンヴェイル』のシジイの若い頃」という印象を受けたしな。
ああ、でも、お付きのメイド(=プラチナのお祖母さん)、ルビーはちょっと良かった。どうせわかりやすいツンデレキャラなのだろうと思っていたら、裏を書いて無口系キャラだった――最初に少し喋ってから、あとはセリフなし――。なるほど、ルッカの相方なら、この方がいいな。二人の「微妙な関係」がその後どうなっていくのか。なかなか楽しみである。
……まあ、楽しみって言っても、「その後」が書かれる可能性は低いんだけどけどね。そもそも書かれたとしても、最後はルッカの身代わりになって殺されちゃうし。