見ていて楽しいシーンは多かったにも関わらず、何か地味な印象を受けた。問題点は見当たらないのに、何か大切なことが忘れられているような気がする。どうも評価しづらい回だ。
原作では終始、由乃の主観で進むが、アニメでは視点は固定しつつも、内面の声はかなり減らされている。そのおかげで、このアニメでありがちな台詞のくどさはなくなっている。しかし同時に、起きている事、見える事は原作と同じだが、その事の意味は語られないので、原作を知らない人は推測せねばならず、原作を呼んでいる人間は一々、原作を思い返さなければならなくなった。
黄薔薇はこのアニメでは冷遇されているが、その分、今回は普段はない要素が見れた。特に剣道部の様子は新鮮でだった。ただし、今回それしかなかったような印象も受けた。
「黄薔薇注意報」と言うエピソードは「ロザリオの滴」「レイニーブルー」という他のエピソードと同時に起きている話であり、話の期間が結構ある。しかし、今回のアニメではなんとなく二、三日の出来事のように見えてしまう。これは物語の舞台が限定されているために時間の経過が分かりにくいことが原因だろう。そのおかけで、令と由乃にとって結構一大事だった今回の事件が、やや軽い印象になってしまっている。
今回は演出的にも作画的にも非常に良く出来ていたし、原作に対する理解もしっかりしていたと思う――令の弱さが綺麗に描けてたのが特に良かった――。ただ、作品自体で綺麗にまとまっている分、視聴者に対して少々素っ気無かった。こういう形は必ずしも嫌いではないが、ちと唐突過ぎた。シリーズ通してこれだったら、むしろ良かったんだが。
おそらく今回の話を一番楽しめるのは、このアニメ見た後で原作を読んだ人だろう。アニメで見て推測した事の答えを原作で読む事になる。それはこの作品のテーマである「好きな人のことを理解していく」事そのものだ。