SF的な宇宙戦闘。でも、音とか光とかの出し方が中途半端に非科学的。都合のいいときは科学的な言葉を持ち出すくせに。
とは言え、それも仕方のないことか。もし科学的に正しいことをきちんとやってしまったら、アニメとして全然楽しくないだろうし、逆に普通にアクションを優先すると、もうSFである価値がなくなってしまう。結局、中間的なものになるのは「SFアニメ」の宿命だ。そういった部分を考慮に入れれば、今回の戦闘シーンは十分な出来だろう。
SF戦闘についてはそれでいいとして、一方ドラマに関してだが……。
なんだ黒幕は結城シメイで良かったのか。原作からの情報とか見ているうちに、これまでのストーリーがごっちゃになっていたので、他の人間だと思い込むようになっていた。結局、最初に思った通りで良かったんだな。
とりあえず、黒幕だったという真相のおかげで、今まで位置付けが不明確だったシメイのポジションがわかったのは良かった。ただ、そのポジションにシメイが配置されていること自体は、あまり好ましくない。
元々、「シメイひとりいれば、艦は動かせる」というセリフが出た段階でかなり興ざめだったが、艦の行動自体が彼の思惑によって決められていたとわかると尚のこと白けてくる。結局、ストーリー的な面でも、シメイひとりが他のクルー全員に対して優位に立っていることになる。
まあ、そもそもキャラの格付けがきっちり決まってしまうこと自体が嫌なんだけどね。ただ、個人的好みを差っぴいても、今回のやり方はまずいと思う。わざわざ、キスカやリオを引きたて役にして格を上げたシノンを、これまた引きたて役にしてシメイの格を上げようとしているんだが、結果としてはむしろシノンの格の方が下がってしまった。当然、キスカやリオの格の下落はそれ以上だ。
全体的にキャラの描き方が泥縄的ということだ。敵も味方もストーリーの都合ばかり考えて行動が決められている。本当はどのキャラにも、進行中のストーリー以前に人生があり、その生きてきた時間によって性格や言動が決るはずなのに。
この話のキャラにはそういう厚みが感じられないんだ。
今回について言えば、あのような決断をした(あるいは出来た)シェンロンのウォン艦長が何を考えていたかが、ここ数回の展開だけでは理解できない。特に(副長以外の)部下の命をどう考えていたかが。
もっとも、1クールしかないアニメで、そこまで言うのは酷か。色々変えているようだから、「原作がこうだから」という言い訳は、もう通用しないが、それでも話が結構複雑であるのは変わりない。どうしようもないことは、あるもんだ。