また総集編とは、この番組の製作スケジュールは大丈夫なのか……、と考えるのは、ちと早計。
今回の話の目的は、シンを主人公の位置にしっかり据えることだ。何しろこの番組、始まってから三ヶ月(1クール)ぐらいは、ほとんどアスランが主役だったからな。ここいらでしっかりと席替えをしておかないと。
もっとも実力という面から見れば、2クール目に入った辺りから既に主人公として活躍していた。だから、ここでしなければならないのは視点を移すこと。それで、今までむしろ客体だったシンを主体として、シンの目から見たこれまでの経過を描いたということだ。
で、実際にシンから見た場合の歴史なんだが……、これがまた見事にずれている。家族を亡くすまではもちろん、その後もシンの独白と、平行して流される過去のシーンとが微妙に噛み合っていない。昔のアズラエル(らしき若人)が数人がかりでコーディネーター一人に返り討ちになっているシーンと、そこでのシンの独白は、シンがいかに物事を自分の都合で見ているかの良い象徴だった。
まあ、ここで描かれた、世界に対するシンの捉え方や気持ちは、今まで見てきた人なら大体わかっていることだが、きっちり描いておくことは必要だろう。それに区切りが明確なのもいいこと。シンの物語はここから本格的に始まるということだ。
ちなみに、こんな手間隙かけるぐらいだったら、最初からシンから見る方向で話を組んで行けば良かったと思われるかもしれないが、それは違う。最初から今回みたいな事情を描いて、シンの視点で話を始めたとしても、それで即、視聴者がシンに感情移入するというものでもない。どうやっても最初は馴染みのあるキラやアスランに肩入れしたくなる。むしろ、気持ちの押し付けに感じられて、シンに反発を抱くだろう――実際、「Ζガンダム」はそれでしくじった――。
だったらいっそのこと、最初はあくまで(険悪な関係の)他人として描いた方がいい。そういった他者をアスランやカガリが理解しようとすることを描くことで、視聴者が理解するように誘導する。そして主役としての十分な実力(戦闘力)を示した上で、初めてその気持ちをはっきり描くことが出来る。
この構成がどのくらい計画的なのかはわからないが、主役を変えて続編を作る際の型として、一つの手本になると思う。
それに、前シリーズは結構間延びしていたからな。そもそも、一つのテーマで一年間続き物を作るのが無理なんだ。最初の「ガンダム」だってテーマは途中で変わったし。その意味ではむしろ1クール目は適当に潰しといて、2クール目から話作った方がまとまりがいい――ついでに言うと「サイバーフォーミュラ」も「電童」も3クールだった――。