良いとも悪いとも言いにくいアニメだ。
先入観なしで見ると普通に出来が良くて面白い。フライングサーカスという架空のスポーツを軸に少女たちの青春と成長を丁寧に描いていき、最終的には試合に勝つだけでなく、敵を改心させたり先生やコーチのトラウマを解消したりしてきっちり大団円。美少女スポ根アニメとしては文句のない出来だ。
でも、原作は恋愛ゲームなんだよね。CМとかでかなりはっきり言っていたからそういう物だと思って見ていたのだが、最後までそっち方向には行かなかった。ケーキ屋に行ったら美味いハンバーグを出された気分とでも言おうか。損をした訳でもないんだが、なんか釈然としない。
客観的に見れば、別に間違ったことをしてはいない。複数のヒロインとパラレルなストーリーから一つを選ぶ(という形の)ゲームを一本道のアニメにすると少なからず齟齬が生じる。幸い恋愛以外にも話の軸に出来る要素があるんだから、そっちだけきっちりやって「恋愛ドラマの方は原作でどうぞ」というのは(商売的なことを差っ引いても)賢明。むしろ客に対して親切。良く出来た「原作を買わせる為のアニメ」だ。
でも、個人的にはこれでは困る。もはやこの手のゲームを(最後まで)やる気力はない。だからこそ、ダイジェストでもいいからと、アニメで見るのだ。「これは終わりではない、始まりにすぎない」と今さら言われてもねえ。
あと、これがはたして狙ってやった事なのかどうかがわからない。なにしろ制作会社やシリーズ構成や監督が『カレイドスター』のメンツだ。それを知った上で見ると、最終回には「まんまだな!」という感想を抱かざるを得ない。きちんと読み込んでこの結論に至ったのなら良いが、原作の在りようとかをまったく理解しようとせず自分たちの枠に無理やり押し込んだのなら問題だ。GONZOには色々と前科がある――そもそも『カレイドスター』からして最初に提示したのとは別の方向に行ってしまった作品――。原作サイドから「ああいう風にしてください」と注文があったという可能性も考えられるが、それはそれでやはり問題だ。なんにせよ、昔を知っている事が、今を楽しむ事の障害になってしまっている。
色々な意味で「二十歳ぐらい若ければ」と思わせるアニメだった。「人には薦められるが個人的には微妙」と言った所。「自分は好きだが人には薦めない」は結構あるが、逆のパターンは珍しい。ある意味、新鮮な体験ではあった。