佐藤竜雄監督の日記で、「宇宙のステルヴィア」の続編企画が消滅した事が明言されてしまった――同時に「機動戦艦ナデシコ」の続編も可能性がなくなったらしいがこっちについてはとりあえずどうでもいい――。
DVD・BOX買うぐらいには愛着があり、アニメの感想を書き始めたきっかけとなったにもなっただけに、いろいろ思う所がある。とりあえず一筆、書いておこう――最近こんな事ばっかりやっているな、私は――。
続編を作らないこと自体は必ずしも悪い事でないと思う。放映終了後すぐの状況なら「続編がほしい、いやむしろ作るべきだ、つーか作れ」と言えたが、時が経つにつれ、そうも行かなくなってきた。時間が空いてしまえば元のスタッフ、キャストを揃えるのも難しくなる。前作と似ても似つかない続編を作るぐらいだったら、このまま終わってしまった方がいい。それも一つの正しさだ。
とは言え、まだ二年だからねえ。移り変わりが激しい昨今だから、かなり昔に感じるが、実際にはまだ大して経っていない。作品内でも続編は前作の二~三年後になるはずであった事を考えると、丁度いいぐらいだ。
それに、監督は企画を練る一方で関係者とのコネクションを維持してきた。これは、そういった前作とのギャップが生じないようにする為でもあると思われる。一人で出来ることは高が知れているとは言え、一人で出来ることは可能な限りしていたんだろう。
そういった努力も労力も、続編が作らせてもらえると信じていたからだ。にも関わらず結果はこの有り様。これだったら最初から「続編の予定は(まず)ない」と言われた方がマシだっただろう――ファンにとっても――。
はっきりとは語られてないし、今後も語られる事もないだろうから推測の域を出ないのだが、今回のことは権利問題の揉め事だと言うのが大方の見解。実際、「ファフナー」「ネギま」と最近のスターチャイルド・XEBEC作品はトラブル――番組途中でのシリーズ構成や監督の交代など――が多かった。そこら辺が原因なのか結果なのかはわからないが、スターチャイルドとXEBECはどうやら「喧嘩別れ」の様子。その為、両方に権利がまたがっている「ステルヴィア」も今後の展開が不可能になったという事だろう。そういった経緯は監督の発言からもうかがえる――と言うか、暗に言っている――。
スターチャイルドとXEBEC、いったいどちらに原因や責任があるかはわからない。見えている部分だけではどちらが悪いとも――あるいは両方とも悪いとも――言える。
とりあえず大月プロデューサーが悪い事にしとくか。こういう場合、(困った事に)だいたいそれで当たりだからな。まあ、経緯はどうあれ結果として(大売れしないまでも)それなりにファンがついている作品を一つ駄目にしたんだ。「売る人」としては責められてしかるべきだ。コンテンツ不足な昨今では尚更のこと。
作品の生死が出来や売り上げじゃなく、権利会社の都合で決められる状況と言うのはやり切れないな――佐藤監督は
どこぞの対談で「製作委員会というものには大抵実体がない。「学園戦記ムリョウ」では例外的に実体のある組織にし、ビデオメーカーに任せると不安なんで、フィルムをしっかり管理してもらった。結果的にはそれが良かった」などと言っていたが、それはつまり「「ステルヴィア」(と「ナデシコ」)はメーカーに任せたのでろくな事にならなかった」という事か――。作り手や視聴者の気持ちを置いておいても、純粋に商業的な問題としても宜しくないだろうに。
そこら辺を憂慮して、あるいはビジネスチャンスと見て、最近では国や銀行が出資とかしてるんだけど、そういったものは失敗が恐いんで、相手にするのはほとんど原作付きの作品だ。まあ、軌道に乗せるまでは堅実に行かなければならない面もあるから最初はそれでいいんだが、上手く行ったとしてはたしてオリジナル作品に手を出すようになるだろうか。上手く行ったらそれ以上は冒険せず、後は機械的に商売をするような気もする。
「宇宙のステルヴィア」というのは原作付きでも過去作品のリメイクでもなく、ここ最近では珍しく広がる可能性を持った作品だった。そういうコンテンツがこんなにあっさり消え去ってしまう現状に、暗澹とせざるを得ない。アニメが一朝一夕で滅ぶなどと言うつもりはない。むしろ産業としてはこれから発展すると思われる。ただ、これから作られる作品は、消耗品としての傾向が強くなるであろう事は、覚悟しなければならないだろう。