先週、カギ爪を見たヴァンが「ニィー」と笑ったのを見て「なんだかなあ」と思った。その更に前の週にレイに同じことをやらせたのは、むしろ上手いと思ったんだ。レイは普段は無表情な人間だから効果的だ。8話の「シホが死んでから、あらゆる喜びを失ってしまった」とかいうセリフにも対応する。でも、ヴァンは普段から結構表情が豊かな人間だから。あそこでわざとらしく笑っても、レイの二番煎じにしか見えなかった。
ただ、表情が豊かとは言え、何時も詰まらなそうにしているのは確か。そういった意味ではヴァンもレイと、立場や気持ちは同じ。だから、そこで笑うのは必ずしも間違ってはいない。同じ道を歩んでいる二人が、決定的な瞬間に別の選択をする。そういう事をやる為にあえて同じ事をさせているのかもしれない。もう少し様子を見てみよう。そう考えて先週は何も書かずにおいた――忙しかったし――。
でも今週、ジョシュアがらみで嬉しそうにしているヴァンを見て、買い被りだったのがわかった。結局、何も考えてなかったんだな。
これなら、カギ爪を見たヴァンはむしろ無表情にするべきだった。普段から表情が豊かで、その時も激昂しまくっていた男が、仇を見た瞬間に無表情になってかつての友(ガドヴェド)を容赦なく粉砕。レイと対照的になりつつも、普段とのギャップも描ける。
なんと言うか、色々やらせすぎる所為で、逆にどんどんヴァンのキャラが薄くなってきているよ。これだったらむしろレイを主人公にした方が話が深まりそうだ。ジョシュアという、ヴァンにとってのウエンディに相当するキャラもいる。何ら不都合はあるまい。
先週の話はこれくらいにして今回の話だが……、馬鹿話の回だったので毎度の事ながら、ダメだった。
毎度毎度、この手の話の時は外しまくるんで、「実は脚本家(倉田英之)以外はやる気がないのか」とも思ったが、それもちょっと違いそうだ。どうも、脚本家のやりたい事が上手く伝わっていないようだ。そこら辺を今回、「声」の部分で感じた。
新キャラのプリシラが喋っているのを聞いて、「なんか今一」と思ったが、声は千葉紗子。演技派とは言わないが、そんなに下手な声優でもない。
それに、上手い下手の問題じゃないんだ。聞いてて「戸惑い」が伝わって来るんだよ。「私は何をすればいいんでしょうか」てな感じの。
どうもこのアニメ、あまり役者に役の説明をしないで、好き勝手にやらせようとしているようだな。ゲストの場合、妙に豪華な連中を連れてきていることもあって、それが割と上手く行っているのだろう。
でも、レギュラーの場合、微妙だ。どうやら回ごとにキャラが安定しない理由はそこら辺にもあるようだ。
それに若手の場合、好きにやれと言われても逆に困るだろう。若いうちはまだ芸風が固まっていないからな。最近の声優は割と何でも出来るからタイプが多いから尚更だ。
前々から思っていたがこのアニメ、スタッフ内の意思統一が図られていないようだ。と言うか、積極的に意思統一をする気がないようだ。
変に枠を設けず各々が個性を発揮できるようにする。そして個性と個性がぶつかり合う事で新しいものが生まれる。そういう事を期待しているのだろう。
でも、それで勝てる時代はもう終わっただろう。作っている方には多々不満かもしれないが、もはや企画段階で勝負はあらかた決まる時代だ。現場のスタッフが好き勝手やってもマイナスにしかなるまい。