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2005年 10月 14日
どうこう言う前に、まずしっかり話が終わった事に驚いた。適当に区切りのいい所までやって、「あとは映画/OVAで」と来ると信じきっていたからな。まさか、あと一話で話まとめてしまうとは思わなかった。
無理やり終わらせるとか、尻切れトンボとかは一応、考慮していたんだ。でも話の内容はえらく順当で、さほど意外性もなく、やることをきっちりやって終わってしまった。だから、さらに驚きだ。 もっとも、一話でこれをやってしまったんだから、ペースに関しては意外と言えるかもしれない。やる事自体は予想の範囲内でも、それをここまであっさりやってしまうとは思わなかった。主人公側の圧勝だ。実際、キラもアスランも、前作ラストで出来なかった事を今回見事にやってしまったよ。 この戦いにおけるアスランの勝利条件は、別にカガリとオーブを救う事ではない。そんな事はやって当たり前の事だ。出来なければ負けだが、出来たからといって勝ちではない。 アスランにとっての「勝ち」はシンを殺さずして止める事だ。ミネルバの乗員たちも助けられればなお良し――ルナマリアの生存はシンの生存の為に必要なので自動的に勝利条件に組み込まれる――だが、とにかくこの戦いが終わった時にシンが生きていれば、父親を止められなかった前作の時よりも大きく前進する。 で、アスランはそれをきっちりやった。今回は見事に勝ちだ。 まあ、かなり力押しではあったがな。 なんと言うか、結局のところ、「話してもわからない奴は、ぶん殴ってわからせろ」だった。まあ、間違ってはいないんだが、シリーズ頭からの五十話、ほぼ全てをかけて来た事の決着が「これ」というのもすごい話だ。 いや、ここまでの積み重ねがあるからこそ、出来た事なんだろうけどね。最初からこうしてもなかなか上手く行かなかっただろう。単純に戦闘の勝敗だけ見ても、ここまでの蓄積があったからあそこまで圧倒できたんだと思う。 「種が割れる」というのが科学的に見てどういう事なのかはさっぱり語られないが、とりあえず、自分のやる事が正しいと強く確信する事によって起こるのは間違いないようだ。逆に言うと、自分のやる事、やろうとしている事に迷いがあると種は割れにくく、また割れたとしても今一、その効果を発揮しない。そういった意味で、「種を割れる者」同士の戦闘は、迷いを振り切れた者が勝つ。 さて、シンは12話だかで最初に割って以来、実に気前良く種を割ってきた。とは言え、シンは別に迷いを振り切った訳ではない。シンは迷うような要因を頭から排除してきたんだ。 これは発想の転換だ。自覚して出来る事ではないから、シン自身は無意識だろうが、あるいはデュランダルはそれがわかっていたのかもしれない。実際、ミネルバに与えられた命令の数々は、シンのそういう性格を後押しする為のものに見える。実際、無知なままだったら、最強の戦士になっていたかもしれない。 とは言え人間、大きな舞台に出れば、そうそう無知でもいられない。シンが本当の意味で困難な戦いを経験すればするほど、色々な事を知ってしまう。いくら目をつむろうとしても、いつかは自分のやっている事に疑問を持つようになる。 で、その「いつか」を早めるのにアスランも一役買っていた。当人には自覚はないだろうが、ここに至るまでに言った数々の言葉がシンの強さにひびを入れてきた。アスランは意図せずに自分が勝つための要因を積みかねていた訳だ。一朝一夕で得た勝利ではない。 もっとも、最後の最後で大きなひびを入れたのはレイなんだけどね。当人はシンの決意を固めるつもりで色々と話したのだろうが、結果として逆効果になった。シンを強くしようと思ったら余計なことを考えさせるべきではなかったな。 何にしてもシンは戦う前から、精神的な意味では既にぼろぼろだった。一方、アスランは延々悩んである種の悟りに達していた。悩んだ時間が長かった分、その悟りは深い。 まあ、悟りと言っても正しい意味でのそれではなく、ある種の割り切りなんだけどね。アスランは、言って聞かせればシンもいつかはわかるだろうと思っていたようだが、結局は上手く行かなかった。それはアスランが、シンを自分と同列に見ようとしていたからだ。自分だったらこれくらい言われればわかる、だからシンもわかるだろうというのは、買い被りだった。相手のレベルに合わせていなかった。 そんな訳でアスランは、シンを自分の所に引っ張りあげる前に、自分がシンの所まで下り、その結果、現時点で出せるベストを出せた。 しかし、かような訳で、シンがアスランに完敗するのは終盤の流れからすると順当だし、むしろ負けた方が当人の為には良かったんだが、最終回でここまでいいとこ無しだとは思わなかった。シンが主人公でない事、少なくとも唯一の主人公ではない事は、中盤辺りでわかっていたが、その代わり最強の敵としてキラにやられるぐらいはすると思っていた。しかし実際には、やられるどころか前に立つことさえ出来なかったよ。 まあ、そうなってしまった要因は、最後の最後までキラのことを「フリーダムのパイロット」としてしか認識しなかった事だな。直接手を下したわけではないにしろ、シンの家族の死にはキラも関わっていたんだ。そこら辺からキラに関わっていけば、(勝てないまでも)最後に一花咲かせる事が出来ただろうに。オーブの慰霊碑の前で顔を合わせたときは、そういう展開になると思っていたんだが、遂に最後まで、そこで会ったのがフリーダムのパイロットとは気付かなかった。 それとも本当はシンも気付いていたのだろうか。ステラが殺された後、フリーダムに関してはそれなりに調べていた。なのにパイロットについてまったく情報を得なかったのは不自然だ。実はシンはフリーダムのパイロットがオーブで会った男である事に薄々気付いていたが、相手の事がわかると戦いにくいので、毎度のように頭から排除していたのかもしれない。 こうして見ると今のシンは、キラに勝つどころか対等に向き合える相手でさえなかったようだ。主役の座を奪うなど夢のまた夢。とりあえず「主役やるには二年早い」という所か。 もっとも、対等に立てなくてむしろ良かったよ。下手に実力が伯仲していたら命がなかったような気がする。キラは、アスラン以外の男は割とどうでもいいからな。結構、容赦なく攻撃してくるぞ――実際、結果としてレイは生きてはいたが、レジェンドに対する攻撃は「死んだら死んだで仕方なし」という感じだった――。 それにシンがキラを一人の人間として見て、その上で家族の死の原因となった事を責めても、今更キラはぶれまい。自分が何かをやろうすれば、どんなに気をつけてもその余波で、誰かが傷ついたり死んだりする。キラはその事をわかっている。わかってその罪を自覚した上で、それでもなお自分の周りの誰かの為に力を振るう。その事はハイネの死について、アスランに責められた際の態度からわかる。 さらに言えば、キラは基本的には人を殺さないようにしているが、殺さなければ他の誰かが犠牲になると思えば、仕方なくその相手を殺す。実際、その考えでステラを殺しているし、今回はデュランダルを殺そうとした。 いや実際、キラも前作の時に較べて随分と強くなった。前の時は、クルーゼの言う嫌な現実を口で否定する事が出来ず、結局クルーゼ本人を消し去るしかなかった――しかもそれを衝動的に行った――。しかし今回は、レイには口で勝ちつつも命を取らず、他方デュランダルに対してはきっちり反論してから、自分の意志で殺そうとした。今回は敵が二人に分かれていたので逆にやりやすかった面もあるだろうが、前作最終回の体たらくに較べると雲泥の差だ。 アスランにしてもそうだが、「完璧な手段がないことは何もしない理由にはならない。この場で出来る最良の事をやる。その結果、犯す罪はしっかり自覚する」といった事がしっかり出来るようになったのは結構な事だ。 もっともキラとレイの戦いがあっさり決まった要因は、キラではなくレイの方にある。まさか、あんなにも簡単に丸め込まれるとは思わなかった。 どうやら、レイの悩みはシンなんかより余程底が深いが、その分、救ってもらいたいという思いも強かったようだ。そこで因縁浅からぬキラに自分を肯定されてしまえば、それだけで来るものがあったのだろう――アスランからは敵としてしか認定されず、まったく理解されなかったので尚更だろう――。 そもそも人間たるもの、そう簡単に「無に帰る」ことを受け入れられるものではない。と言うか、それを受け入れてしまった人間は何もしようとはしまい。「全力で自分の存在を抹消する」なんて行動はそれ自体で既に矛盾する。自殺したがる人間は、実際には人一倍、生きることに対する欲求が強いのだ。レイも本当は、一人の人間として生きて、死にたかったのだろう。 そしてレイは、キラ・ヤマトという存在がある事こそが自分たちが作られた事の成果である事に気付いてしまった。そしてさらに、キラが一人の人間として生きていく事は自分たちの為し得なかった事を代わりにやってくれる事に気付いてしまった。例えどんなに憎み、妬もうとも、その事実に気付いてしまった以上、キラを殺す事、殺させる事は出来なくなってしまったのだ。 それにしても「お母さん」という科白は、レイが一人の人間でありたかった事を鮮やかに表していた。 かなり前に、「シンは失われた家族の代わりを求めている」などと書いたが、むしろレイの方がその欲求は強かったようだ。まあ、失われたとはいえ、シンには確かに親はあった。そして自分が存在している事が、親が存在していた確かな証しになる。だから妹の代わりは求めても、親の代わりはさほど求めなかったのだろう。対してレイは、親というものがそもそも存在しない。知らないのではなく存在しない。この事実は、彼が普通の人間と異なる事を端的に象徴するものだ。故に「普通の人間として生まれたかった」は「親がほしかった」に直接結びつく。 しかし、やはり前に「タリアは親か教育者として艦の若者たちに接するべきだ」と書いたが、満更外れでもなかったようだ。実際、タリアがもっと早く、レイに対して親のように接していれば、結果は変わっていたかも知れない。結局、タリアは軍人としては立派だったが、軍人としての立場から出ようとしなかったので、事態の悪化を防ぐ事が出来なかった。ここら辺、ナタルやトダカと同じだ。 ナタル、トダカ、タリアはいずれも最後の最後に軍人としての立場を逸脱し、そして死ぬのだが、これをどう見るべきか。それまで軍人としての地位に甘んじて、自分の良心や本当の気持ちに嘘をついていた付けが回ってきたという事だろうか。それとも正しい軍人が、軍人である事から逸脱して、一人の人間として正しい事をするには、命を捨てなければならないという事なのだろうか。なかなかに難しい。タリアの場合、実際に自分で産んだ子供がいるから更に面倒だ。 いや、タリアが子供を産んだという事が、タリアが立派な軍人である事と対立するなら、逆にわかりやすいんだ。面倒なのは、その二つの事が同じ側にある事だ。 子供がほしかったタリアはデュランダルと別れ、他の男性と(おそらく)結婚して子供を作った。デュランダルとの間には子供ができない以上、子供を諦められないのなら、デュランダルを諦めるしかない。そう考えたのだろう。 でも、それって盛大な思い込みだよなあ。だって、世の中には養子という制度があるんだもん。 その事に気付かなかったのか、あるいは気付いても選択肢に入れなかったのか。どちらにせよ、タリアは「子供=自分の遺伝子を受け継いでいる人間」という図式に拘った。非常にコーディネイターらしいことだ。 いや、事の原因を「タリアが遺伝子に拘る人間だから」とするのは早計かもしれない。タリアが単純に自分の遺伝子を受け継ぐ子供がほしいと考えるなら――あるいは自分で産んだ子供がほしいと考えるなら――精子バンクの類いを使えばいいはずだ。現代社会でも存在するものだ。この世界でも技術的に問題があるとは思えない。なぜ使わなかったのだろう。 案外ここら辺、コーディネイター社会の価値観に原因があるのかもしれない。遺伝子を操作して好きなように子供を作れるようになったために、逆に遺伝的な繋がりのない親子関係を偽りの関係と考える風潮が出来たかもしれない。極度の少子化に悩んでいる事も考えると、養子という考え方がコーディネイターの社会で受け入れられにくい制度である可能性は高い――戦争が始まってからは事情が変わっただろうが――。 色々と考えてみると、タリアという女性は、コーディネイターの社会において非常に理想的な――都合のいい――構成員である事がわかる。社会に出てその能力を発揮する一方で、「産む性」としての女性の役割りもしっかりはたす。その為に個人的な恋愛感情も犠牲にする。様々な面で社会に貢献している。 ところで、その社会に貢献しているタリアという人間は、はたして幸せだろうか。これがどうも微妙だ。 最後にタリアはデュランダルと一緒に死ぬ事を選ぶが、人の親としては問題がありそうに見える。タリアが本当に好きだったのは誰であろうと子供には関係ない。生まれたからには育ててもらわなければならない。自分の恋愛感情を優先して養育の義務を放棄するのは人間として無責任だ。 しかし、タリア・グラディスほど「無責任」という言葉から遠い人間もいない。むしろ責任感がありすぎるぐらいだ。ミネルバが沈んだ際、後始末をアーサーに頼むが、その程度の事でさえ「悪いんだけど」と言っている。別に子供のことも忘れている訳ではなく、キラにマリューへの伝言を託している。 では何故、そんな責任感のあるタリアが、子供の養育という事にまったく懸念を示さず、デュランダルと死ぬ事を選択したか。 もっともありえそうなのは、養育の義務と権利がない事だろう。つまり、タリアは子供が出来た後、離婚し、子供は父親と暮らしているという事だ。こう考えると色々と辻褄は合う。何しろタリアは、家に電話なり手紙なりをした様子が全然ないからな。もし、家に子供がいるのなら、いくら軍務が忙しくとも連絡は頻繁に取らねばなるまい。それをしなかった辺り、やはり家には誰もいないのだろう。 この仮説が正しければ、最愛のデュランダルと別れてまで子供を産んだタリアは、親としての幸せはあまり享受できなかったことになる。世界に対して貢献しているタリアに、世界はあまり報いていないようだ。 ところで、キラはデスティニープランをして「コーディネイターの世界の究極」と称している。もしそうなら、コーディネイター社会の理想的な構成員であるタリアは、即ちデスティニープランによって作られる社会においても理想的な構成員となる。そして、ディスティニープラン後の世界は、それ以前の世界と違って、その構成員は必ず幸せになれる。少なくともデュランダルはそれを目指している。 こうして見てみると、デスティニーブランによって作られる世界はタリアにとって非常に都合のいい世界に見える。当人がどれだけ意識しているかどうかわからないが、デュランダルがデスティニープランを推し進めたのは、タリアの幸せを思ってのものかもしれない。 好きな女一人の幸せのためにここまで大掛かりなことをしたという説は、突拍子もないものに思うかもしれないが、ギルバート・デュランダルという人間も能力値が有り余っている人間だからな。凡人だったら妥協して心の中で折り合いをつけるよう事でも、どうにかしようとして結果的にとんでもない事をしてしまう。タリアの「しょうのない人ね」は、そういったデュランダルの一面を一言で表してしまったものだろう。 こういう風に考えると、今回の騒動の原因はタリアということになる。タリアが側に居て、それこそ膝枕でもしてやっていれば、デュランダルも妙な事は考えなかっただろうし、また考えたとしても実行しなかっただろう。タリア・グラディスという女、なかなかに「傾国の美女」だ。 結局、「男って女が側についていてやらないと簡単に駄目になる」、そういうことかねえ。タリアがデュランダルを膝枕していたその時に、別の場所でルナマリアがシンを膝枕していたのは象徴的だ。タリアが間違った道を経て、死ぬ前にやっとたどり着いた所に、ルナマリアは早々にたどり着いたということだろう。 そうそう、同じような事はアスランとカガリにも言えるかもしれない。カガリがユウナとあのまま結婚していたら、アスランも変な方向に行ってしまった可能性はある。そうじゃなくったってアスランにはデュランダルになる素質が十分にあるんだ。そう考えると、あそこでキラが結婚式をぶっ壊してくれたのは(ユウナにとっては堪ったものではないが)世界のためには幸いだったようだ――まあ、アスランは「キラがいればいい」という男なので、カガリに限らず女なんていなくても大丈夫なような気もするが――。 しかし、こうして並べてみると、世代ごとに同じような事を繰り返しているな。もっとも同じような事を繰り返しつつも、少しずつましになっているようにも見える。まあ、若者は大人を反面教師とし、それを乗り越えようとする事で新しい時代を作るものだからな。 その意味で、前を行く大人は手強い方がむしろ若者の為かもしれない。実際、デュランダルが手強かったおかげで、アスランにしてもラクスにしても少なからず成長した。それはキラも同様。 最後の対峙においてデュランダルは、キラの「僕たちはそうならない道を選ぶことが出来るんだ」という言葉を、「だが誰も選ばない」とあっさり返してしまう――嫌なタイミングで本当のこと言うから手強いんだ、このオジサン――。むきになったキラは色々と反論するんだが、最後には「覚悟はある。僕は戦う」と言ってしまう。この瞬間、キラは自分に宿題を出してしまった。 元々、キラにとってこの戦いは自衛の為のものであり、デュランダルを殺さなければ自分とラクスの命と自由が守れないから殺そうとしたに過ぎない。そして、それで十分正当性があった。だから、本来だったら世界の行く末に責任など負う必要などなかったんだ。 しかし、こう言ってしまった以上、もはや無責任ではいられない。キラは今後の世界に関わっていかなければならなくなった。具体的にどのように「戦う」かはともかくとして、能動的に動かなければならないのは確かだろう。少なくとも、もう孤児院の居候をやっている事は許されまい――シンの方はむしろ、しばらく孤児院の居候やっているべきなんだけどね――。 今回の戦いでキラたちは、無数の世界に至る可能性を守る為に一つの世界に至る道を潰した。現時点では壊すだけで何も生み出していないのだ。だから現時点ではその是非は決められない。キラたちのやった事が正しいかどうかは今後、彼らがどれくらい世界を良く出来たかによって決まる。 とは言え、それはまた別の話。この物語はこれでおしまい。「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」完。 ……と思ったら、なんかDVD最終巻で、結構長いエピローグがある様子。となると、生き残った者たちが、この後、どういう事をしようとしているかぐらいは、早いうちにわかるかもしれない。この作品自体の最終的な評価もそれを見てから出した方が良さそうだ。とりあえず今回は細々とした事をいくつか書いて終了としよう。 ○ピンクのザク 今回一番笑ったのは冒頭。メサイアから発進する無数のザクの中に、あたかも素麺のごとく、一体だけピンクの機体が。 そういや、そんなのもあったな、ザクウォーリア、ライブコンサートver.。 ミーアが死んだんでやる事もなくなり、本来の役目に戻ったということか、生意気にもブレイズウィザードなんてつけて出撃しているよ。まあ、最終決戦で一機でも必要な状況だから出すのは間違っていない。性能的にはまったく同じなようだから、機体の方には問題はないだろう。 ただ、乗っている奴の方はどうなんだろう。コンサートで動かしていた奴がそのまま戦場に出たのか、通常任務に着いている機体を失ったパイロットに回したのかはわからないが、何にしてもさぞかし複雑だっただろう。 ○続編(?)(その1) デュランダルは最後の最後までオーブの殲滅に拘っていたが、あの状況でオーブを滅ぼしたからといってどうにかなるのだろうか。確かにオーブを滅ぼし、ラクスを殺せば、キラたちにとっては負けであろう。でもそれがデュランダルにとっての勝ちにはなるまい。レクイエムを発射し、またエターナルを沈めたとしても、結局はフリーダムやジャスティスにデュランダル自身は殺されただろう。いや、むしろラクスやカガリが死んだ場合、キラやアスランに容赦がなくなる。何にしても、フリーダムとジャスティスを排除する前に、デスティニーとレジェンドが落とされた以上、デュランダルに勝ち目はなかった。その状況でなおオーブの殲滅を優先しようとしていたのは何故か。さすがのデュランダルでも負けがこむと、理性的な判断が出来なくなるという事だろうか。 あるいは、デスティニープランは既にデュランダルが死んでも実行できるぐらいまで、用意が出来ていたのかもしれない。デュランダルがデスティニープランを世界に対して示した時、何処とも知れぬ場所で謎のコンピューター群が起動していた。今後のスケジュールがしっかりプログラミングがされているなら、デュランダル自身がいなくなっても、プランを阻害する要素さえ排除できていればデスティニープランは実行できる。そしてオーブとラクスを排除さえすれば、プランに反対する勢力はまとまりとしての力を失う。だからオーブの殲滅を優先した。そう考えると、まずまず辻褄は合う。 しかし、もしそうなら件のコンピューターが壊された様子がないのが気になる。続編でも作った日には、今度はそのコンピューターが敵になったりするのだろうか。「GEAR戦士 電童」って話も敵の大将はその手のコンピューターだったし、満更ないとも言い切れないな。 ○続編(?)(その2) アスランに完敗して意識を失ったシンは夢の中でステラと会話した。あれを「天国のステラが感謝と赦しを与えに来た」と見るか、「シンの生存本能が感情を納得させる為に幻を見せた」と見るかは人それぞれの自由だが、とにかくシンが過去から解放されて未来に向かう事が出来るようになったというのは確かなようだ。 この話、敵も見方も運命、運命言っていたから倒すべき、あるいは乗り越えるべき対象は運命だけだと思っていたが、どうやら「過去」というのもその対象であったようだ。そして、「デスティニー」=「運命」であるように、「レジェンド」=「過去」なんだな。そう考えると、フリーダムとジャスティスがレジェンドとデスティニーを倒したのは、「自由と正義の意志によって、運命と過去に囚われた者たちを解放した」という事の象徴になってくる。 どうやら主役級の機体の名前にはそれなりに寓意がある様子。この線で考えるなら、続編が出来た際、シンが乗る機体は「ガンダム・フューチャー」、あるいは「ガンダム・トゥモロー」辺りになるか。タイトルも「機動戦士ガンダムSEED FUTURE」とかになりそうだ。
by GyouKyou
| 2005-10-14 19:25
| 「ガンダムSEED DESTINY」
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Comments(2)
Commented
by
フーラー
at 2005-10-15 00:46
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そして結局キラは引鉄を引けなかった・・・
デュランダルのときも、ミーアのときも、撃ったのはキラではなかったですし。 ん、ラクス暗殺の件のときは撃ちましたっけ? まぁいいや。 そこら辺がアスランとキラの強さの差でしょうか。 アスランは躊躇い無く撃っているようでしたが、キラはラクスが狙われているというのに構えることしかできなかった。まぁ純粋に先をとられたと言われればそれまでですが。 続編があるのか無いのか、雲を掴む様な域を出ていないみたいですが、BLOOD+の後に放送するのだとしたら、じかんをかけられる分良い出来にしてもらいたいですね。
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Commented
by
GyouKyou at 2005-10-17 17:31
続編はどうでしょうねえ。アニメの出来が良かろうが悪かろうが、「プラモが売れなければそれまで」というのがバンダイですから。「SEED」はテレビ局の方が結構積極的ですから、多少事情は違うでしょうけど、TBSはほら、何か大変な事になっているようですから。
もっとも続編が作られるとすれば、それはそれまでの作品が肯定されたという事にはなりますから、いきなり方向性が変わるという事はなく、基本的には同じ乗りで作るでしょう。少なくともアンチ・キラな人たちが喜ぶような話にはならないんじゃないかと思います。
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