内容がどうこう以前に、今更『ファフナー』の外伝が作られること自体に疑問を持つ。『ステルヴィア』の続編がポシャった事を考えると尚更だ。
やはり『ファフナー』の方が商売的に上手く行っていたのだろうか。広い客層に対して作った『ステルヴィア』よりも、客を絞った『ファフナー』の方が数字的な結果は良かったとしても不思議ではない。ただ、それでもどちらか一つ残すと言うのなら、『ステルヴィア』の方を残してほしかった。別に『ステルヴィア』が物凄い傑作だったと言うつもりはないが、『ファフナー』よりは話の完成度は高いし、他にないものを持っていたし、将来性も高かった。正直、こんな物を作っている余裕があるのなら、『ステルヴィア』の続編でも外伝でも作らせてやれと思ってしまう。
しかしまあ、そういう不満はあるが、このスペシャル版自体はかなり面白かったと思う。『ファフナー』という話でやるべき事がしっかり出来ている。特に主人公たちの描き方に関しては「まず良い所を見せる→不幸があって少し駄目になる→それを乗り越える事でもっと良い所を見せる」という流れがしっかり出来ていた。まったくよく1時間枠でここまできっちり収めたものだ。確定していた全滅という結末をただの悲劇にせず、見ている方の心を見事に掴んでいる。
ただ、ここまで見事な「前史」でも、本編前半戦の体たらくをフォローする事は出来なかった。いやむしろ、こちらがかのように見事だったんで尚更本編の不出来、と言うか本編の主人公どもの駄目さ加減が強調される事になってしまった。なにしろ今回の話で出た犠牲者のことを、本編の連中はちっとも思い出さなかったからな。
まあ、将陵僚や生駒祐未は今回始めて作られたキャラだから、当然本編で名前が出てくる事はありえないんだけどね。でも蔵前果林は本編でも一応いた。にも関わらず、本編の連中は彼女の死を大して悲しまなかったし、滅多に思い出しもしなかった。本編を見ていたとき思っていた「それってどうよ」という気持ちが、今回の話でさらに強くなってしまった。
あと、今回の話で狩谷由紀恵の姿がまったく見えなかった事が気になる。面倒なキャラはいなかった事にするという事か。
どうやら、今回の話を面白いと感じる為には、本編の方の問題が多い部分を都合良く忘れておく必要があるようだな。
いやまあ、そもそも本編のラストがそういう感じではあったんだ。だからこそ尚の事(上手く勝ち逃げしたんだから)余計な事をするべきではなかったんだ。
見てて楽しめた作品ではあったが、それでもやはり、この外伝を作ったこと自体にはかなり否定的にならざるを得ない。