毎度の事ながら泥縄的だ。カレンが戦う理由を得て決意をする話をやりたかったのだろうが、今になってこんな話をやってしまったおかげで逆に、これまでさしたる理由もなく戦って(人を殺して)いた事になってしまった。ルルーシュと共通項を作るのは悪くないが、そういう事は始める前に考えておく事だったな。
それから、これまた今に始まった事ではないが、悪い意味でわかりやす過ぎ。ルルーシュにしてもスザクにしてもカレンにしても、個人の事情や体験が思想や主義に直結してしまっている。
確かに、母親や兄妹を傷つけられたルルーシュやカレンが(父親が支配者階級として属する)帝国の崩壊を望むのは自然だ。帝国に降伏する事を決断した父を否定したくないスザクが、帝国を内部から変えたいと思うのも理解できる。しかし自然で理解できるからといって、肯定や評価できるとは限らない。むしろ、個人的な問題を世界レベルの問題にすりかえてしまうその姿勢は批判されてしかるべき物だ。
この場合、個人的な感情は維持しつつもそれに支配されず、より高いレベルで物を考えるのが好ましい在りようだ。そしてエンターテインメントの主人公(ヒーロー)たちは、そういった意味で見ている方の少し上を行くべきだ。この話の登場人物たちのように、容姿や能力が不自然に優れていれば尚更だ。
それなのに、この話の主人公たちは人格的には平凡もしくはそれ以下だ。だから見ててげんなりする。
ちなみに現実の人間というのは複雑な生き物で、過去の大きな出来事だけで、その人間の今が決まる物ではない。だから、登場人物たちが個人的な悲劇を乗り越えて、より高いレベルで物を考えたとしても決してリアリティがない事にはならない。逆に言えば、この話の主人公たちの人格の低さをリアリティという言葉で正当化する事は出来ない。