見ている最中は楽しめたし、見終わった直後はいい物を見たと思ったのだが、そのあと時間が経つにつれ、段々と微妙に腹が立ってきた。この最終回、テーマらしい事を匂わせて綺麗にまとめているように見えるが、その実、色々な事がうやむやなままだ。話の持って行き方が上手いので誤魔化されたが、実際のところ何も終わっていない。
その上手く誤魔化すテクニックは見事なんだが、実際に上手く誤魔化されかけただけに、その見事さにも腹が立つ。しかも、クオリティがまた高かったからな。作画、演出、演技、全ての面でハイクオリティなので、逆に苦々しく感じてしまう。
とは言え、いつ続編を作らされるかわからないこのご時世ではそれも仕方がないか、とも思う。このくらいハイクオリティだと、それこそすぐ続編の話とか出そうだ――もう既に決まっているのかもしれない――。このスタッフが『D.C.~ダ・カーポ~』という、これ以上ないくらいきちんと終わったアニメの続きを作らされて苦労していた事を思うと、この終わり方は賢明だとさえ思う。
最終回と話の閉じ方に関してはこれくらいしてシリーズの全体の話に移るが、結局、最後まで主人公が男である事に意味の無い話だったな。
もちろん、主人公が男でないとストーリー的に成り立たない部分はある。でも、そこら辺ってあまり本質的な部分ではなく、主人公を男じゃなくして(=女にして)その部分のストーリーが変わったとしても、大筋では同じような話が作れると思う。と言うか、視聴者に対して同じような楽しさは提供できると思う。基本的には普通の百合話だからな。
おそらく、女装した少年という主人公の設定は「男を排除した女の子だけの世界が理想だが、そうすると男である自分の居場所が無い」というジレンマに対する解決策として生み出された物なのだろう。だから主人公=プレイヤーの図式で成り立つゲーム、特に18禁ゲームでは効果を発揮するが、主人公との距離がゲームほど近くないアニメではあまり意味が無いのだろう。実際、このアニメでは、百合の世界に不純物が入っているだけになってしまっている。
そんな訳で、クオリティは高いしストーリーに特に悪い所も無いのだが、主人公の設定があまりプラス方向に働いていないので、どうにも歯切れが悪かった。これだったら普通に主人公を女の子にして百合話にしておいた方が据わりが良かったであろうに――まあ百合話には食傷気味なので、そうだったらそうだったでやはり文句が出たと思うが――。原作があるから仕方のない話だが、なんとも締まらん事だ。