踏み出さなければ願いは叶わない。これは真理だ。でも、踏み出したからといって、必ず願いが叶うわけではない。これも真理だ。でもでも、願いに至る道は一つではなく、諦めなければチャンスはある。それもまた真理だ。
希望のある話をしつつも、ままならない現実もしっかり描く。脇役たちも過度に甘くならず、締める所は締めた上で手を差し伸べる。優しさと厳しさのバランスが取れていた。基本的には「いい話」だったな。
ただ、「インベルを起動させる事が出来なかったから不合格」という流れには不自然な物を感じた。これまでインベルを動かせたのは春香だけ。真や伊織が試したが、無理だった。そういった経緯を知っていれば、普通は「機体の方に何らかの問題がある」と考えるだろうし、インベルを起動させる事が出来なかったからといって即座に不合格にはせず、とりあえずネーブラでも試させてみるだろう。なぜ皆、「インベルが動かなかったから雪歩はアイドルマスターとして不適切」という裁定に納得する。「ネーブラの方には既に二人いるから、これ以上パイロットが増えてもしょうがない。例えアイドルマスターとして十分な能力をもっていても、インベルを動かせないなら、ここでは必要ではない」という意味なら筋は通るが、そうではないようだからな。
まあ、「雪歩には裏があるんで、ここでアイドルに乗っける訳には行かない」という事情はわかるんだけどね。でも、「後々のストーリーの為には今のストーリーは適当でも構わない」という訳でもないからな。例え予め決められていた所に到着できても、そこに至るまでの展開に無理があったら意味がない。
それに、その「予め決められている所」が微妙だからな。まったく、雪歩は『舞-乙HiME』のエルスそのままか。始まった当初からそんな感じではあったが、まさかここまでとは思わなかった。「どうせ隠そうとしても隠せるもんじゃないんだから、視聴者にはさっさとバラしてしまえ」というのは賢明だと思うが、流石にこうも同じ事をされると、「それはもうやった」と言いたくなって来る。
いや、だからと言ってそこで裏の裏を書いて「雪歩にまったく後ろ暗い所がない」と表に戻ってこられても困るんだけどね。
どうだろう、正体をばらした後の展開を変える事で、差別化を図るつもりなのだろうか。まあ、よくよく考えれば一応は預かり物だ。『舞-乙HiME』の時のように気前良く殺す訳にはいかんか。そこら辺の線から考えると、雪歩が本性を表してからが真の始まり、という事になりそうだな。