繭子と辻堂の過去はだいたい予想通りだったが、それでもかなり来る物があった。幼い頃の純粋な想いをオジサンになっても失っていない辻堂を見てて、目頭が熱くなったよ。こういう話には弱い。二人の話はシンプルな分、主人公サイドよりもまとまりは良いな。今回のラストシーンで納まる物が納まる所に綺麗に納まった。
ただ、回想シーンで「途中」が無かったのは片手落ちだった。子供の頃の様子が描かれたと思ったら、その次のシーンではもうオジサンになっていたからな。こういう話をやるんなら、段々と年を取らせるようにするべきだ。せめて二十歳前後の姿ぐらいは描かないと。
まあ、全て描かないと言うのも一つの在りようだから、一概には否定できないけどね。一部を描いて、残りを感じさせるのも一つの手だ。ちゃんと奥にその「残り」があるのなら、とりあえずは問題は無い。
実際、今回は全体として奥行きが感じられた。キャラの言動の奥に、直接的には語られない感情があるのがわかる。蒼乃やこよりに対した際の真名の様子がその一例。真名は蒼乃に対してそれなりに、好意だの敬意だの憧れだのを持っていたようだからな。裏切られたという思いが(依人に対する好意とは関係ない所にも)あるのだろう。あの辺りの描写からは、真名のそういった、言葉にならない複雑な気持ちがきっちり伝わって来たよ。
おんなじような事はバトルの所でも言えた。
頭と終りにバトルが一回ずつあったが、いずれにしても単に動きが良い(=セル画の枚数が多い)だけでなく、戦いの駆け引きがきっちり描かれていて良かった。登場人物が、勝つ為にきちんと頭を使っているというのは、実によろしい。
もっとも、頭を使っていたのは蒼乃と辻堂で、いずれの場合も茉莉の方は無策だった。二人よりも長く生きているくせに、やる事に芸が無い。負けたことを差っ引いても、パッとしなかった。ヒロインなのに。
とは言え、そこら辺は蒼乃や辻堂と、茉莉の気持ちの差を表す為に意図的にやった事なのだろう。実際、殺る気の差というものがひしひしと伝わってきた。
やはりバトルというのは、当事者たちにきちんとしたバックボーンがあってこそ盛り上がる物。そして、そのバックボーンがきちんと伝わるのが、上手い演出、見せ方だ。今回のバトルシーンは、そういった深いレベルでも良く出来ていた。