最大の秘密が明らかになり、物語もいよいよ佳境に入ってきた……はずなのだが今一つピンと来ない。真相自体は順当だ。きちんと伏線も張ってあったし特に問題は無い。ただ、依人が自分という存在に疑問を持って動き出してから、実際に真相に辿り着くまでがやけにあっさりしていたので、重みという物があまり感じられないのだ。
視点を置くべき位置が、はっきりしないのが良くないな。なるべく主人公の側から見るのか、それとも特に方向は固定しないのか。登場人物の気持ちに寄り添うようにして見るのか、それとも少し距離を置く感じで見るのか。そういった事がその場の都合で変わるので、感情的・感覚的な部分でずれが生じてしまう。
あと、情報を出し惜しみし過ぎるのも問題だ。些細な事までもったいぶって、なかなか明かそうとしないので、わからない事だらけになってポイントがぼやけてしまう。その為に重要な秘密が明らかになっても、それが重要であると実感しにくい。
ストーリー構成的に隠しておく必要があること以外は、積極的にばらした方が色んな意味でいいと思うんだけどね。依人と真名の出会いなんかも、もっと早くにあっさりはっきり描いてほしかった。今になってそういう事をそういう形で明らかにされても、ストレートには納得できない。むしろ釈然としない物を感じてしまったよ。