一応、最低限やるべき事はやっていたが、本当に一応という感じだった。物語全体の構成からすれば、春香と雪歩によるタイマンをラストバトルにする事は正しいんだが、描かれたそのシーンにはむしろ違和感を覚えた。なにしろ攻撃を受けるまで、春香が雪歩の事にまったく言及してなかったからな。
「インベルがヌービアムの所に行きたがっているから」という動機で行動させるのは構わないが、何故そこで「私も雪歩ちゃんと会って話したいから」とも言わせない。インベルの想いを尊重したとしても、それとは別に春香の想いがあっても良かろう。何故そこまでして主体性を持たせない。そこできっちり自分の意思があるように描かないと、春香が何を言っても説得力がなくなるぞ。実際、「愛とはなんぞや」のくだりは内容だけなら(別に目新しくは無いけど)悪くないし、この話のテーマにも成りえたんだが、春香が言ったんで逆に取って付けたように感じられてしまった。そういう事を言わせるのなら、これまでにそれなりの振る舞いをさせておかないと。
まったく春香はなんでこんなパッとしないキャラになってしまったんだろう。前半戦までは、割と出来る主人公だったのに。
いや、なんでかってそりゃあ、伊織に美味しい所を全部持ってかれてしまったからなんだけどね。「バカだけど諦めずに常に前向き」というポジションを伊織に押さえられてしまったので、「頭が悪いくせに、うじうじと悩む」キャラにならざるを得なくなってしまったようだ。真面目な話、伊織の方がよっぽど主人公らしい。
まあ、伊織の方にも、真との関係では引っ掛かる部分がかなりあったけどね。こっちはこっちで最後まであまり真っ当に向き合わなかった。和解も結局、アイドルの方で勝手にやってしまったしな。
いや、「一発ぶん殴ってチャラにしてやる」ってのは悪くなかったけどね。「食堂での借り」みたいで。伊織と真の話としては、あの決着の付け方は今一つだが、ネーブラとヒエムスの話としては悪くなかったりする。
そこに限らず、アイドルたちを中心にして見ればこの話、割かし綺麗に話が通る。最後のぎりぎりまでヌービアムの気持ちがまったく描かれなかったが、そこら辺に関しては「そういう構成なのだろう」と納得できるんだよ。
今まで少し思った事があるが、この話、マジで主役はアイドルたちで、ヒロインたちはその付属物に過ぎないのかもしれない。アイドルマスターと言いつつも、あまりアイドルの上に立っているとは思えない。どちらかと言えば、アイドルの意思に引きずられている。タイトルに偽りありだ。『アイドルスレイブ XENOGLOSSIA』とでも付けた方が、むしろ実情に合うかもしれない。