悠二とお嬢さんたちの諍いは、思っていたよりも低いレベルのものだったようだ。
一美の事はともかく、他に関しては「この町から離れたくないし、母さんを一人にしたくもない」と、自分の感情をきちんと把握しており、把握した上で「でも、大切なものたちを巻き込まないために、この町を離れる」という決断をしたのだと思っていた。また、そういう自分のつらさを知るとシャナたちもつらくなるだろうから、なるべく表に出さないようにしてたのだと思っていた。しかし、ただ単に、自分の気持ちから目を背けていただけだった。これでは怒られても仕方がない。
頭で考えるのは構わないが、それならそれで徹底的に考えないと。自分の感情も要素として、計算や分析の対象にするぐらいじゃないと、現実に立ち向かえないぞ。
まあ、頭だけで考えているだけでは、逆にそこまで頭を使う事もできないんだけどね。そこまでするには、まず強固な意志とかが必要になる。「覚悟ってのは頭じゃなくて、腹で決めるもんよ」というマージョリーの言葉はもっともである。
ただ、スタート地点に想いだの気持ちだの意志だのをきっちり置くのは正しいが、それは必要条件であって十分条件ではない。心のままに後先を考えずに振る舞っていると、却って想うもの、大切なものを失う事になる。実際、悠二は状況をわきまえずシャナに気持ちを伝えようとして、ピンチに陥るようだし。
どうにも、ちぐはぐな印象を受ける。人として生きていく上で大切な諸々の事を伝えようとする姿勢は評価するが、それがストーリーに上手く乗っかっていない。田中の方の話もそうだ。
17話で問題のあった所、あるいは欠けていた所をフォローしたようにも見える。確かにマージョリーに直接会って話した方が筋が通っている。「緒方を守りたいから紅世の事柄とは関わらない」という理屈にあった不自然さも少し軽減した。エピソードとしては必ずしも悪くない。
ただ、これをこのタイミングでやる事には違和感を覚えた。メインの流れに無理やり、あるいはついでに突っ込んだように見えてしまった。「蛇足」という言葉が頭に浮かんだよ。17話の出来が良かったので尚更そう感じる。
まあ、逆から見れば、「17話で綺麗にまとめすぎた」という事になるんだけどね。続きがあるのなら、ああいう風なまとめ方はするべきではなかったな。