かなり前に見終わった作品だが、そのまま流してしまいたくないので、少し書いておく。
良くない評判ばかり聞いていたので、警戒しながら見ていたのだが、別に悪い物ではなかった。見ていて不快になるような事は終始一貫してなかったし、盛り上がるべき所ではきっちり盛り上がっていた。まずは良作といっていいだろう。特に良かったのは、「世界の状況」と「主人公のキャラ」と「周囲の対応」の関係が上手くまとまっていた事だ。
危機的状況にある世界を救う為にその力を求められた主人公が、(物語的な意味で)当然のように道具になる事を拒否するのだが、それが拒否の為の拒否にはなっていない。自分は自分の信ずる道を進むが、それを偉い人たちが利用して結果的に世界が救われる事は別に否定しない。また、主人公は世界を救う力を持っているのだが、だからと言って周囲は主人公の駄目な所まで肯定しない。駄目な所は駄目ときっちり認識している。しかし、駄目な所をとりあげて、過度に否定するような事もしない。駄目な所、至らない所は自分たちがフォローして、彼には存分に余人に出来ないような事をやってもらう。
天才にはその心のおもむくままに、存分に才を発揮してもらう。周囲や社会はそれによって生じる流れを押し止めるのではなく、自分たちの利に適うように上手く誘導する。清く正しい天才の扱い方、あるいは天才との付き合い方だ。しかも、この話の脇役たちの場合、理性よりもむしろ感性でやっている。周囲は周囲で自分の心のおもむくままにその力――場合によっては別の分野の天才――を振るい、それが結果的に皆の利益になる。ピンチではあるのだが、その一方で綺麗にまとまっている幸福な世界(時代)に、この物語の主役たちはいたのだ。最終的にハッピーエンドになるのは必然だし、ストレスが溜まらないのも当然だ。
ただ、あれだ。物語世界としてあまりに綺麗なまとまっているので、逆に見ている方が入り込めない部分はあった。出来る連中、それも自分の長所短所をきっちり理解している――主人公は頭が悪い事をきちんと自覚している――出来る連中が集まって、協力しながら前向きに大問題を(紆余曲折があるように見えるが本質的には)スムーズに解決するのはストレスがたまらなくていいのだが、その代わりに少し疎外感を覚えさせられた。世界が崩壊に向かう過程も、それを押し止めて皆が幸せになる結果も、どこか遠く感じられた。ハッピーエンドになって良かったと思うが、それも「良かったね」と、どこか人事っぽい。別の世界とか別の星とか言うよりも、別の国の出来事を見ているような印象だった。
そんなこんなで、悪くないとは思うが、今一つ乗れない部分があった本作。リアルタイムで見なかったから乗れなかったのか、リアルタイムで見なかったから悪くないと思えるのか。どうも、見る状況や見方で評価や印象がかなり変わるような気がする。もう一度頭から見返したら、はたして印象は良くなるのか、悪くなるのか。